らっぱ

号笛を紹介したのでこちらについてもちょっと書いておこうかなーと。
さすがにこれは駐屯地の売店では売っていません。(笑)

「ラッパ」ではなく「らっぱ」が自衛隊の制式。
ミリヲタの人にはわざわざ「喇叭」と書く人が多いのですが「喇叭」は旧軍での表記です。
信号らっぱには二つ巻と三つ巻の2種類あって、これは三つ巻。
陸上自衛隊では「三つ巻90式」と呼ばれているものです。
実はぴぎーさん、この名称を知ったときにちょっとびっくりしました。
90式の「90」って、皇紀2590年の「90」ですよね?
陸軍から陸上自衛隊へとかわった際にいろいろな物の呼び名がかわりましたが、どうやら90式はそのまま生き残ったようです。

三つ巻は航空自衛隊も使っています。
海上自衛隊だけは二つ巻です。
二つ巻は三つ巻に比べて少し長く、音も高くなっています。
金管楽器は高音(管が長い)方が安定した音をだすのが難しくなるので、二つ巻の方が多少難度が高いということになります。
演奏会の幕間イベントでらっぱの体験があった際、司会の隊員さんが「両方吹かせてもらったけれど、陸のらっぱしか音がでなかった」とおっしゃたことがあるのですが、それもそのあたりが原因です。

トランペットの様に弁がないので吹き方によって音程を変えなければなりません。
吹奏楽部でトランペットを吹いていた経験のある同僚にビューグルの説明をしたら
「(ピストンがなかったら)ドミソしか音でないじゃないですか!」と本気で驚かれました。
同僚の言うとおり、「ド」「ミ」「ソ」しかだせませんが、「ド」は3つの高さの音、「ソ」は2つの高さの音が出せますので、実際にだせる音は「ド」「ソ」「ド」「ミ」「ソ」「ド」の6音、それに最後の「ド」の下の音になる「シ♭」をあわせた7つの音です。
ものすご~~~~~く上手い人ならもう一音高い「ド」もだせるような話を何かで見た記憶があるのですが、実際は「シ♭」と次の「ド」も凄く上手い人でないときれいに出せない音なので、らっぱ譜は大体最初の「ド」「ソ」「ド」「ミ」「ソ」の5音で書かれています。
以前にも書いたことがあるのですが、正露丸のコマーシャルで有名な日本軍の食事喇叭は高い方の「ド」「ミ」「ソ」たった3音でできています。
音楽まつりなどでお馴染みの海上自衛隊の「巡検」が5音、陸上自衛隊の訓練展示の際に必ず吹かれる「状況開始」「状況修了」が3音といった感じです。
これだけの音であれだけの数のらっぱ譜を作らなければいけなかった人も大変だったでしょうね。

「おもちゃのチャチャチャ」という歌に「鉛の兵隊トテチテタ」という歌詞がありますが、この「トテチテタ」というのは喇叭の教育の際に用いた喇叭専用の音階です。
そして喇叭を吹くときにの唇を形でもありました。(元々は「ドトタテチ」だったようですが)
つまり「トテチテタ(ドソドミソ)」という音を出したかったら「トテチテタ」と口を動かせばよいわけですね。
まぁ、なんて合理的!
あ、今「ホンマにそんなんで吹けるんかいな?」と思いましたね?
思いましたね?
いや、いいですよ。
だって、ぴぎーさんも思いましたもの。(笑)
だからね、実際にやってみました。(やったのか?)
ああ、なるほどね……うまいこと考えたな、と思いました。
初めて喇叭を持つ人がいきなり「トテチテタ」と言ったところで音はでしょうが、音が出始めた人に教えるには具合いいかなと。
一音一音の唇の形や息の使い方を的確な表現で伝えるのはわりあい面倒くさい話なので、「「トテチテタ~」と唄え!」というのはうまいやり方かもしれません。
まぁ、あくまでも音を出せるようになるための足がかりとして……ですけどね。
きれいな音を出せるようになるのはその後の本人の努力だと思います、やっぱり。

陸上自衛隊・航空自衛隊と海上自衛隊のらっぱが違うのは前述のとおりですが、使用するらっぱ譜も陸空と海では違っています。
陸空は自衛隊のために新しく作られたらっぱ譜を使い、海は海軍の喇叭譜を引き継いだらっぱ譜を使っています。
そのせいで国歌である「君が代」が2種類あるという、ちょっとヘンなことになっているのですが、あまり気にしてはいけないのでしょう。(笑)
らっぱの種類、らっぱ譜以外にもう一つ大きな違いがあります。
左が陸上自衛隊のらっぱ手、右が海上自衛隊のらっぱ手ですが違いがわかりますでしょうか?


海は管の巻いている部分が見えているのに陸の方は見えません。
そう、持ち方が違うのです。。
海はトランペットと同じ向きで持ちますが、陸はらっぱ横に倒して持っています。
たかがらっぱですが、陸と海いろいろ違っておもしろいですね。

旧軍の頃から喇叭譜をモチーフとして取り入れた曲がたくさんあります。
自衛隊のイベントによく行かれる方ならお馴染みの「祝典ギャロップ」の中間部は旧軍の喇叭譜「君が代」ですね。
イベントなどのドリル演奏では既存の曲にらっぱがそのまま組み込まれたり、らっぱで吹けるメロディーが加えられたりと、さまざまなアレンジが施されたものが披露されています。
ドリル以外の演奏でもらっぱ譜がモチーフとしてではなく、そのままの形で使われることがありますが、そういう場合はトランペットがらっぱの役目を務めることがほとんどです。
らっぱ譜を使った曲はたくさんありますので、入手しやすい曲を1つだけご紹介しておきます。
真島俊夫作曲の「勇者達の夢」。
これは陸上自衛隊東部方面音楽隊の委嘱曲で「陸上自衛隊のために」という副題がつけられています。
陸上自衛隊のらっぱ譜「消灯」がモチーフとして使われていて、曲中「消灯」がいろいろ姿をかえて現れます。
「消灯」の音階だったり音型だったりそのままだったり……。
東方音の演奏と第1混成団音楽隊(現15音)の演奏がWorld Windband Web Music Download Storeで配信されていますので、1曲単位での購入が可能です。
白樺録音企画の「吹奏楽大全集」のサイトでは前述の演奏を含む演奏会のCDが購入可能となっていますので、「データ販売はちょっとな~」という方はそちらも覗いてみてくださいね。

最後にこんなのも紹介しておきます。
 「ラッパ吹きの平日」
  http://www.youtube.com/watch?v=G-8rrC-IYs4




| 信号らっぱ | 01:29 PM | comments (2) | trackback (x) |


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コメント

はじめまして。
消防団で二つ巻きラッパを吹いています。
検索からお邪魔しました。
大変詳しくまとめられており、参考になりました。
ますますご活躍下さい。

| ラッパ吹き | EMAIL | URL | 2013/05/16 06:22 AM | T3YcQ.oc |

>ラッパ吹きさま

はじめまして。
せっかくいただいたコメントがスパムフイルターにひっかかっていました。
申し訳ありません。

URL、ものすごいチャレンジですね。
こういう挑戦は大好きです、わたし。(笑)

わたしの住んでいる区域には消防団がないのでよその消防団は
尊敬の対象です。
消防団のご活動はいろいろ大変だと聞きますが、これからもぜひ地元のためにご活躍くださいませ。

| ぴぎー | EMAIL | URL | 2013/06/23 12:56 PM | J/QlxxMc |

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